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技術情報・コラム

機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎


第29回 アルミ電解コンデンサの働き

 

 今回から、アルミ電解コンデンサについて説明していきます。

アルミ電解コンデンサの働き

 コンデンサ には電気を蓄える働きがあり、蓄えられる電気の量(静電容量)は電極の面積に比例します。したがって、大容量のコンデンサほどサイズが大きくなりますが、その中でもアルミ電解コンデンサは、電解液を用いることによって小型化と大容量を両立しており、機器のコンパクト化において欠かせない部品となっています。その一方で、コンデンサは高温になるほど寿命が低下することから、熱設計においては周囲温度をいかに抑えるかが重要な項目となります。

 図29.1には FET を用いたスイッチング回路を示しています。この回路では、ゲート に加わる500 Hzの矩形波信号によって、FETがON, OFFを繰り返しますが、導通時に負荷R1に流れる電流(ドレイン電流)は、第8回でも触れたように、電源V1の内部 インピーダンス によって、電源電圧 / 負荷抵抗 = 1 [A] よりも小さな値となります(図29.2)。

FETを用いたスイッチング回路
図29.1  FETを用いたスイッチング回路

ドレイン電圧とドレイン電流の変化
図29.2 ドレイン電圧とドレイン電流の変化

 この対策として、図29.3に示すように電源と並列にコンデンサを接続する方法があります。その場合、導通時に負荷R1に流れる電流は、図29.4に示すように1 Aに近い値となります。

電源と並列になるようにコンデンサを接続した回路
図29.3 電源と並列になるようにコンデンサを接続した回路

コンデンサを接続した場合のドレイン電圧とドレイン電流の変化
図29.4 コンデンサを接続した場合のドレイン電圧とドレイン電流の変化

 それぞれの 電流 実効値 を比較すると、図29.1の回路では640 mAであるのに対して、コンデンサを接続した図29.3に示す回路では700 mA と約10 %効率が向上しています。これをコンデンサの平滑化作用といい、FETの導通時にはコンデンサに蓄えられた電荷が電流として供給され、FETの遮断時には電源から電流が供給され充電されることで、電圧を平滑化します。

 第19 ~ 20回でも触れたように、インバータなどの電力制御回路ではパワー素子の発熱を抑える目的でスイッチング動作を行うため、コンデンサによる効率改善が必須となります。図29.3の回路においても6,800 μFと大きな容量のコンデンサが必要となるため、アルミ電解コンデンサが用いられます。次に、図29.3の回路に用いるアルミ電解コンデンサを選定してみましょう。

アルミ電解コンデンサの選定

 アルミ電解コンデンサの仕様には、容量、サイズ、電圧定格、電流定格と定格寿命があります。このうち容量については、充放電回路の計算、もしくはLTSpiceなどのシミュレーターを用いて、平滑化作用との兼ね合いを考慮して決定します。

 電圧定格は、ディレーティングを80 %、負荷は電源電圧として、12.5 Vよりも大きなものを選択します。電流定格は、同じくディレーティングを80 %として、LTSpiceなどのシミュレーション、あるいは試作回路で測定したコンデンサに流れる電流の1.25倍より大きなものを選択します。一般に、容量とサイズ・電圧定格とはトレードオフの関係にあり、大容量のものほどサイズが大きくなる、あるいは電圧定格が小さくなる傾向があります。逆に、電圧定格が高いものは容量が小さい、あるいはサイズが大きくなります。回路設計では、こういったトレードオフの関係に加え、コストも含めてバランスの良い部品を選定することになります。

 次回は、アルミ電解コンデンサの寿命について説明します。

 

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著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。
熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、
「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

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