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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎


第24回 [LTspice] FETの選定と損失計算 (2)

 

 今回は、FETのスイッチング損失について説明していきます。

スイッチング回路と損失

 図24.1に前回設計した回路を示しています。今回はゲート電圧をV2として、500 Hzの矩形波信号を与えます。

FETを用いたスイッチング回路
図24.1 FETを用いたスイッチング回路

 第22回で説明した トランジスタ スイッチング損失 と同様、FET のゲート電圧が瞬間的に0 Vになったとしても、ドレイン電圧とドレイン電流は徐々に変化し、図24.2に示すようなドレイン電圧とドレイン電流の積に等しい損失を発生します。

ドレイン電流遮断時の損失
図24.2 ドレイン電流遮断時の損失

 スイッチング回路での損失は、第22回での説明と同じく、導通時の損失とスイッチング損失との和(損失の時間変化の積分値を時間で割った値)となります。第3回で触れたように、LTspiceではシミュレーションを行った後に、Altキーを押しながらトランジスタをクリックすることで、損失の変化をグラフで表示することが可能です。また、Ctrlキーを押しながらグラフタイトルをクリックすることで損失の平均値が求められます。

EMC対策と損失

 高速のスイッチングは高調波成分を発生し、電磁両立性EMC: Electro Magnetic Compatibility)性能のエミッション、すなわち有害な電磁波の放射に影響を及ぼします。ここではドレイン電圧をフーリエ解析することによって、高調波成分を観測してみます。

 LTspiceではシミュレーションを行ってドレイン電圧波形を表示させたあと、グラフ上で右クリックメニューから [View] – [FFT] – [V(n001)] と選択することで、ドレイン電圧の FFT 解析結果を表示させることができます。図24.3にドレイン電圧のFFT解析結果を示します。この図から1 MHz付近までドレイン電圧成分はなだらかに減少し、電磁波として放射される可能性があることがわかります。

ドレイン電圧のFFT処理結果
図24.3 ドレイン電圧のFFT処理結果(クリックで拡大)

 この対策としてゲート信号の変化をなだらかにする、いわゆる ソフトスイッチング と呼ばれる手法が用いられます。図24.4の青線はゲート信号を表し、0.2 msで5 Vから0 Vに変化しています。この場合のドレイン電圧のFFT解析結果を見ると、図24.5に示すように高調波成分が大きく減少しており、放射される電磁波も減少すると考えられます。しかしながら、図24.4の赤破線で示すスイッチング損失は、図24.2に示す矩形波信号でのスイッチング損失と比較すると幅が広くなっており、損失が大きくなっていることがわかります。このように、EMC対策と熱設計とはトレードオフの関係にあり、エミッション対策としてのソフトスイッチングは損失を増加させ、熱設計をより困難にさせることがわかります。

ドレイン電流遮断時の損失
図24.4 ドレイン電流遮断時の損失

ドレイン電圧のFFT処理結果
図 24.5 ドレイン電圧のFFT処理結果(クリックで拡大)

 次回は、基板専用熱解析ツール PICLS を使ってサーマルビアを用いた放熱について検討していきます。

 

 

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著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。
熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、
「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

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