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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎


第23回 [LTspice] FETの選定と損失計算 (1)

 

 今回は、FETを用いたスイッチング回路について考えていきます。

ソース接地回路

 N型チャネルFET では ゲート 電圧 が加わると、ドレイン から 電流 が吸い込まれます。今回はその動作を図23.1に示す回路を使って詳しく見てみます。ゲートには電圧が鋸歯状に0 ~ 5 Vに変化する電圧源V2が接続されています。また、ドレインには10 Ω の抵抗R1を介して、直流 10 Vの電圧源が接続されています。

ソース接地回路
図23.1 ソース接地回路

 この回路を動作させた際の、ゲート電圧に対するドレイン電流の変化を図23.2に示します。この図を見ると、ゲート電圧が約2.8 Vに達したところでドレイン電流が急速に増加している、すなわちドレイン・ソース間が導通していることがわかります。このときのゲート電圧を ゲートしきい値電圧 といいます。

ゲート電圧によるドレイン電流の変化
図23.2 ゲート電圧によるドレイン電流の変化

 FETは バイポーラトランジスタ とは異なり電圧のみで動作します。また、バイポーラトランジスタでは導通時には ダイオード と同じく順方向の電圧降下(ほぼ一定の電圧)が生じましたが、FETでは抵抗と同じく電流による電圧降下(電流に比例した電圧)を生じます。つまり、第20回の説明を言い換えれば「N型チャネルFETではゲートにしきい値電圧以上の電圧が加わると、ドレイン・ソース間の抵抗が小さくなる」となります。このときに生じるドレイン・ソース間抵抗は、ドレイン・ソース間オン抵抗 と呼ばれます。導通時の損失は電気抵抗で生じる損失と同様に、ドレイン・ソース間オン抵抗とドレイン電流の2乗との積で表されます。

FETの選定

 図23.1の回路に適したFETを選定してみます。V1は10 V、R1は10 Ω であるため、ドレインには最大で1 Aの電流が流れます。FETが故障しないように動作させるにはFETへの負荷が 絶対最大定格 を上回らないようにしなければなりません。つまり、FETへの負荷よりも大きな定格のFETを選択します。また、ディレーティング として、最大定格に対して電流と電圧と温度は80 %以下、損失は50 %以下となるようにします(これらはあくまでも一般的な値であり、要求される信頼性などによって異なることに注意してください)。

 選定の際に押さえるべきFETの最大定格は、ドレイン・ソース間電圧、ドレイン電流、許容損失、チャネル部温度です(ゲート・ソース間電圧などもありますが、ここでは省略します)。このうち、損失とチャネル部温度についてはバイポーラトランジスタと同様に考えることができ、チャネル部と雰囲気間の熱抵抗と損失との積はチャネル部温度と周囲温度の差に等しくなります。

 図23.1の回路で各項目を検討していきます。V1 = 10 Vであるため、ドレイン・ソース間電圧定格は、10 [V] / 0.8 = 12.5 [V] 以上が必要となります。また、前述のようにドレインには1 Aの電流が流れるため、ドレイン電流定格は1 [A] / 0.8 = 1.25 [A] 以上が必要となります。

 次に、損失を計算します。FETの仕様書からドレイン・ソース間オン抵抗を読み取ります。図23.1のFETでは0.18 Ω とすると、損失は 0.18 [Ω] × 1 [A] × 1 [A] = 0.18 [W] となります。50 % のディレーティングを考慮すると、許容損失は0.18 [W] / 0.5 = 0.36 [W] 以上が必要となります。

 これらをまとめると、ドレイン・ソース間電圧定格が12.5 V以上、ドレイン電流が1.25 A以上、許容損失が0.36 W以上のFETを選択すれば良いことになります。

 次回は、FETのスイッチング損失について説明します。

 

 

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著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。
熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、
「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

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