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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎


第16回 ディレーティング

 今回はディレーティングについて説明していきます。

ディレーティングとは?

 前回は、仕様書に記載された条件で絶対最大定格を満たすどうかを検討しましたが、実際には、設計条件が仕様書に記載された条件と一致するとは限りません。このような場合には、設計条件に合わせて 絶対最大定格 を修正する必要があります。また、設計結果が絶対最大定格を超えなければ良いというわけではなく、ある程度の余裕を持たせた設計を行います。

 このように余裕を持って部品の定格値以下で動作させることを ディレーティング(derating)といいます。ディレーティングによって設計条件と仕様書の条件の違いに対応する、そして部品の信頼性を向上させるという二つの目的があります。

仕様書とは異なる使用条件への対応

 例えば、素子の出力電流の最大絶対定格が雰囲気温度40 ℃ で規定されている一方で、製品の設計上の雰囲気温度の上限が60 ℃であるような場合には、仕様書に記載されたディレーティングカーブを用いて、出力電流の最大絶対定格を設計上の雰囲気温度60 ℃に換算します。

図16.1に出力電流のディレーティングカーブの例を示します。この図から雰囲気温度60 ℃に対応する出力電流を読み取ることによって、60 ℃では出力電流が2.1 Aを超えてはならないことが分かります。


図16.1 出力電流のディレーティングカーブ

製品の信頼性向上

 半導体は動作時の負荷によって信頼性が異なり、最大定格に対する負荷の割合が低いほど信頼性が向上する、すなわち故障率が低下することが知られています。このことから、一定の信頼性を保証する目的で、最大定格に対してある割合の余裕を見込んだ設計が行われます。

表16.1に一般的な設計におけるディレーティングの目安を示します。電圧・電流・温度に関しては最大定格の80 %、損失に関しては最大定格の50 %を超えないことを設計目標とすることが多いようです。

表16.1 ディレーティングの目安
項目 最大定格に対する負荷率
電圧80 %
電流80 %
損失50 %
温度80 %

 さて、前回の ダイオード に表16.1の目安を適用すると 接合部温度 は 150 [℃] × 0.8 = 120 [℃]、尖頭逆電圧 は 600 [V] × 0.8 = 480 [V]、出力電流は 2.6 [A] × 0.8 = 2.08 [A] となり、いずれも設計目標値を超えないことが分かります。また、第10回「電気抵抗の選定と損失計算 (2)」において、定格電力が選定計算で求められた値の2倍以上となる抵抗器を選定したのも、損失は最大定格の50 %を超えないことを目安としたことによるものです。なお、これらはあくまでも一般的な目安であり、製品に要求される信頼性や用途、設計指針によってその値は異なってきます。

次回からは、基板専用熱解析ツール PICLS を使って部品温度の予測を行っていきます。

 

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著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。
熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、
「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

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