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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第6章 熱流体解析の手法


6.5 数値計算法

6.5.6 サイクル内ループ

 熱流体解析 で扱う 流れ速度)と温度)の関係を図6.50に示していますが、実際にはこれらが同時に影響を及ぼし合いながら現象が起こります。


図6.50 流れと熱の関係

 ところが、前回 示した計算のフローチャートでは、流れ → 熱 のように 基礎方程式 を順に解いていました。このように本来は同時に起こる現象を計算の都合上、異なるタイミングで解いていることが原因で、非定常解析 では問題を生じる場合があります(なお、定常解析 では、すべての変数に関して十分に収束した解が得られていれば、タイミングのずれの影響はありません)。

 タイミングのずれが問題になりやすいのは、1サイクルの間に速度や温度といった変数が相互に大きな影響を及ぼす場合です(1サイクルで温度が大きく変化する場合など)。このような場合には、その瞬間の解が正しく得られないばかりではなく、計算が 発散 に至ってしまうこともあります。

 この問題は 流れ → 熱 の順に計算された温度変化が同じ瞬間の流れにフィードバックされていないことによって生じます。したがって、更新された変数を互いに参照できるように1サイクルの間に何度か「方程式を再構成して解き直す」ことを行えば、タイミングのずれを軽減することができます。これを行うための機能が サイクル内ループ(STREAMでは 非線形ループ という名称です)で、図6.51に示す繰り返し計算を行います。


図6.51 サイクル内ループ

 これによって、同一サイクルで更新された温度を参照しながら速度の計算をもう一度行う、ということが可能になります。また、以前に触れた 移流項 の線形化に対しても、より新しい(本来の解に近い)速度を用いることができ、線形化の影響を低減することができます。

 原理的には十分小さな 時間間隔 が設定されていれば、サイクル内ループの必要はありませんが、それができない状況で計算の安定性などに問題がある場合には有効です。ただし、サイクル内ループを行うとその回数だけ、計算時間が増加することには注意が必要です。

 もっと知りたい   弱連成法と強連成法
 複数の物理現象が組み合わされた計算にはさまざまなものがあります。先の例の流れと熱以外にも、流体・構造連成(Fluid-Structure Interaction, FSI)と呼ばれる、流れから受ける力によって構造物(固体)が変形し、さらに固体の変形によって 流体 も力を受けるといった計算などが挙げられます。

 このような複数の現象が相互に影響し合う現象において、それぞれの現象を記述した基礎方程式を順に解いていく、すなわち、ある方程式を解く間には他の方程式の変数は定数と見なして解く計算の仕方を 弱連成法 分離型解法 といいます。

 これに対して、それぞれの方程式を一まとめにした連成方程式系を構成し、すべての変数を同時に解く方法を 強連成法 一体型解法 といいます。

 強連成法は相互作用が強い現象を安定に解くことができますが、すべての方程式を一括して解くため同じ解法を用いる必要があります。これは前述のFSIであれば、固体の変形も流れもすべて 有限要素法 で計算するといった具合です。

 一方で、弱連成法では方程式ごとに異なる解法を選択することができ、流れは 有限体積法、固体の変形は有限要素法というように、それぞれの現象に適した解法を組み合わせることが可能です。一方で相互の結びつきが強い現象に対しては計算が不安定になりやすいという欠点もありますが、前述のサイクル内ループと組み合わせることで、強連成法に近い効果を得ることも可能です。サイクル内ループと組み合わせた弱連成法は広義の強連成法に含められますが、明確に区別する場合には 分離反復型解法 漸近的強連成法 などと呼ばれることもあります。

< 6.5.5 解析のフローチャートと反復計算

 

上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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