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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第6章 熱流体解析の手法


6.5 数値計算法

6.5.2 マトリックスソルバー (2)

 前回反復法 の一つである ヤコビ法 の計算例を示しましたが、反復法では 反復回数 を多くするほど、解析解 に近い結果を得ることができます。理論上は無限回の反復を行えば、解析解と一致する結果が得られますが、現実には無限回の計算は行えないため、有限回の反復で計算を打ち切らなければなりません。

 計算を打ち切るかどうかの判定に用いられる基準が 収束判定値 です。収束判定値に小さな値を指定し、反復法によって得られた結果の 誤差 が収束判定値を下回った場合に計算を打ち切るという方法が取られます。それでは、具体的に見ていきたいと思います。まず、行列形式で表現された以下の連立1次方程式を考えます。

 有限回の反復計算によって得られた解には誤差が含まれているため、厳密には元の連立方程式を満たしません。そのときのずれを 残差 といい、これを r とすると以下の式で求めることができます。

 しかしながら、残差だけで正しい評価を行うことはできません。これは残差が1 ℃であっても、温度差が100 ℃の計算と温度差が1 ℃の計算では残差の相対的な割合が異なるためです。そこで、一般には 相対残差 というものが用いられます。相対残差を ε とすると、以下の式で計算されます。

 図6.47 (a) に示すように相対残差の値が収束判定値を下回ったときに解が得られたものと判断して計算を終了します。これを 収束 といいます。また、場合によっては計算が収束に至らないことがあるため、そのときは図6.47 (b) に示すように、事前に定められた最大反復回数に達した時点で計算を終了します。



図6.47 相対残差と反復回数の関係

 ただし、反復回数が最大反復回数に達したということは、計算が収束しておらず得られた解の誤差が大きいことを意味しています。このような状態が続くと、妥当な結果が得られない場合や、時には計算値が有限の値に収まらず、コンピューターで計算が続けられない状態に陥ることがあります。これを 発散 といいます。計算の発散は、条件設定の不備やメッシュ品質の問題で生じることも多いため、計算が発散してしまった場合にはそれらを見直してみると良いでしょう。

 もっと知りたい   さまざまな誤差
 コンピューターによる数値計算には、さまざまな誤差が伴います。

 上述のように反復計算では有限回の反復で計算を打ち切るため、解には必ず誤差が含まれます。このように反復計算を打ち切ったことに伴う誤差を 打ち切り誤差 といいます。

 また、コンピューターで扱える数値は有限の桁数の数値となります。したがって、「2/3」のように本来は桁数が無限の数値も、コンピューターの内部では0.6666666667 のように有限桁の数値で表現されることになります。このようにコンピューターが扱える桁数の制限のために、数値が丸められて生じる誤差のことを 丸め誤差 といいます。

 他には、差分法 有限体積法 で微分方程式を 離散化 することに伴う誤差もあります。これを 離散化誤差 といいます。詳しくは、6.2.2節 の  もっと知りたい  をご覧ください。

< 6.5.2 マトリックスソルバー (1) 6.5.3 非圧縮性流体の数値解法 >

 

上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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