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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第6章 熱流体解析の手法


6.4.2 時間の分割

 6.1節 でも触れましたが、コンピューターは連続な値をそのまま扱うことができません。そのため、6.2.1節 の空間の 離散化 と同じ要領で、時間に関しても飛び飛びの値で考える必要があります。

 非定常解析 では解析を行う時間帯を細かく区切り、少しずつ時間を進めながら計算を行っていきます。この区切られた時間のことを 時間間隔 時間刻み といいます。もちろん、空間の場合と同様に、考えている時間以外の値を求めることはできません。

 解析を行う時間と時間間隔の関係を図6.36に示します。時間間隔を大きくするほど計算の繰り返し回数は少なくて済みますが、その分予測の精度は低下します。このことは、現在の空模様から明日の天気を予測するのと、1ヶ月先の天気を予測するのではどちらの精度のほうが高いかということを考えると、イメージできるのではないでしょうか。なお、図6.36はあくまでも例で、実際の計算の多くでは1秒に満たない程度の時間間隔が要求されます。


図6.36 時間間隔と計算回数の関係

 適切な時間間隔は 流れ など、計算対象の状況によって大きく異なります。これを端的に示したものが図6.37です。変動が大きい場合には (a) のように時間間隔の影響が大きくなりますが、変動が小さい場合には (b) のように大きな時間間隔でも比較的少ない差に留まることもあります。


(a) 変動が大きい場合

(b) 変動が小さい場合
図6.37 時間間隔と変動量の関係

 適切な時間間隔を流れの観点から示した目安として、クーラン数 があります。クーラン数 C 速度 u, 時間間隔を Δt, 要素 の幅を ΔL として、以下の式で表されます。



図6.38 クーラン数のパラメータ

 クーラン数の値は、設定された時間間隔が経過する間に、流れが何要素分の距離を進むかを示しています。例えば、クーラン数が1であれば、図6.39の上の図のようにある位置における流れは、次の瞬間には隣の要素に進みます。そのため、メッシュ本来の解像度を発揮することができます。それに対して、クーラン数が10の場合には、図6.39の下の図のように流れは次の瞬間に要素10個分進むことになり、その間の9つの要素を素通りすることになります。そのため、メッシュサイズほどの細かい変動が捉えられなくなります。


図6.39 流れの進み方とクーラン数の関係

 クーラン数の値は、要素の大きさと各要素における速度の大きさに依存するため、完全に均一な メッシュ、均一な流れでない限りは 解析領域 の位置によって異なる値となります。例えば、同じ速度であっても要素が小さい場所、あるいは同じ要素サイズであっても速度が大きい場所などではクーラン数が大きくなります。

 上述のように理想的なクーラン数は1程度ですが、それでは現実的な計算時間に収まらない場合も多いため、計算に要する時間も踏まえながら、最大となるクーラン数をできるだけ抑えられるような時間間隔を設定することが必要です。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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