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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第4章 伝熱


4.6 熱放射

4.6.1 熱放射とは

 物体表面の原子からは、物体の 温度 に応じた波長の 電磁波 が放出されています。逆に原子が電磁波を受け取ると、その電磁波を内部エネルギーに変換し、物体の温度が変化するという性質があります。

 そのため、図4.19のように複数の物体がある場合には、ある物体から放出された電磁波が別の物体の表面に到達することによって が移動し、物体の温度が変化します。このように、周囲の空気の温度を変化させることなく、電磁波の形で熱が物体間を移動することを 熱放射 熱輻射 あるいは単に 放射 輻射 といいます。

2つの物体の熱放射
図4.19 2つの物体の熱放射

 2つの物体間の 伝熱 熱伝導 で起こる場合、2つの物体の間には熱を伝える何らかの物質が必要となります。また、対流熱伝達 では2つの物体の間に何らかの 流体 が存在している必要があります。それに対して、熱放射は物体間に熱を伝える媒体がなくても熱の移動が生じます。真空の宇宙によって隔てられた太陽の熱が地球まで届くのも熱放射の性質によるものです。

太陽からの熱放射
図4.20 太陽からの熱放射

 熱放射は熱伝導や対流熱伝達と同時に起こります。ところが、熱放射による熱の伝わり方は、反射 吸収透過 といった物質の光学的性質に大きく依存し、熱伝導や対流熱伝達とはメカニズムが大きく異なることから、多くの場合はこれらと独立して考えられます。

 もっと知りたい   電磁波の波長

 熱放射では熱が電磁波によって伝わりますが、このときの電磁波の波長は 固体 の温度によって変化します。

 図4.21に電磁波の波長と名称をいくつか示します。身の回りで見られる比較的低温の固体からの熱放射では、赤外線と呼ばれる波長 0.8 μm ~ 0.8 mm の電磁波が多く放出されます。ちなみに、調理器具やヒーターなどの説明で時折見られる遠赤外線とは、概ね波長が4.0 μm 以上の赤外線のことです。これに対し、波長が 4.0 μm 未満のものは近赤外線と呼ばれます。

電磁波の波長と名称
図4.21 電磁波の波長と名称

 熱放射の波長は固体の温度上昇とともに短波長側に移動し、その放射強さも増していきます。そして、次第に可視光線と呼ばれる 0.4 μm ~ 0.8 μm の波長帯を含む電磁波へと変化していきます。鉄などの金属を加熱していくと次第に赤熱していきますが、これは可視光線で最も波長が長い(赤外線寄りの)色が赤色であることによるものです。また、最近少なくなった白熱電球はフィラメントを高温に加熱して、フィラメントからの熱放射に含まれる可視光線で周囲を照らす仕組みです。

 熱放射による可視光線は温度が上がるにつれて順に赤・橙・黄・緑・青・紫の色を含むようになり、極めて高温になるとこれらの色が混ざり合って青白く見えるようになります。日中の太陽が青白く見えるのはこの理由によるものです。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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