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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第4章 伝熱


4.5 対流熱伝達

4.5.1 対流熱伝達とは

 流体 には流れるという性質があります。そのため、流体の 流れ を伴う伝熱では、熱伝導 のほかに流れ(対流 )によっても が運ばれます。このように流れによって熱が運ばれることを 対流熱伝達 といいます。対流熱伝達のことを単に熱伝達と呼ぶ場合もありますが、一方で熱伝達は 伝熱 と同じ意味で用いられることもあるため、使い方には注意が必要です。

 図4.8に示すように、低温の流体が高温の平板上を流れる場合を考えてみます。

平板上を流れる流体
図4.8 平板上を流れる流体

 流体は平板によって加熱されるため、流体の 温度 は平板の表面では平板と等しく、表面から離れるにつれて低くなっていきます。そして、十分離れた位置では流入温度(平板に加熱される前の流体の温度)に等しくなります。このとき、物体近傍に形成される温度が変化する領域(図4.8の黒線より下の領域)のことを 温度境界層 といいます。また、温度境界層の外側における温度を 主流温度 バルク温度 といいます。

 ところで、平板から流体に伝わる単位面積あたりの熱量q [W/m2 ] が、平板の表面温度 T [K] と主流温度 Tf [K] の差に比例すると考えると、これらの関係は以下の式のように表すことができます。

熱量 q [W/m2 ]=熱伝達係数 h [W/(m2 ⋅K)]×(表面温度 Tw [K]-主流温度 Tf [K])

 式中の比例係数hのことを 熱伝達係数 (または 熱伝達率 )といい、単位は W/(m2 ⋅K) です。熱伝達係数は流体に固有の 物性値 ではなく、流体の種類や流れの状態、物体形状や表面の粗さなどによって複雑に変化します。そして、この値が大きいほどより多くの熱が伝わります。

 熱伝達係数は、一般に流体の 熱伝導率 が大きいほど大きな値をとります。図4.9 (a) に示すように冷たい風と冷たい水に触れた場合を比較すると、温度が同じであっても水のほうがより冷たく感じます。これは水の熱伝達係数のほうが空気の熱伝達係数よりも大きいことによるものです。

 また、伝熱面近傍の 流速 が大きいほど熱伝達係数が大きくなります。図4.9 (b) に示すように冬に風が吹くと風がないときに比べて寒く感じますが、これは風速が大きくなると熱伝達係数が大きくなり、身体からより多くの熱が奪われてしまうためです。

熱伝達係数の大小
図4.9 熱伝達係数の大小

 もっと知りたい   プラントル数

 熱伝導率 λ [W/(m⋅K)] を 密度 ρ [kg/m3 ] と 比熱 c [J/(kg⋅K)] の積で割ったものを 熱拡散率 または 温度伝導率 といい、単位はm2 /sです。熱拡散率を κ [m2 /s] とすると、以下の式で与えられます。

熱拡散率

熱拡散率は温度の拡がり方を表しており、その値によって温度境界層の発達の仕方が異なってきます。

 一方、速度境界層 の発達の仕方を左右するものは 動粘性係数 ν で、その単位は熱拡散率と同じく m2 /s となります。熱拡散率と動粘性係数の比を取った 無次元数 プラントル数 Pr といい、以下の式によって与えられます。

プラントル数

 プラントル数は速度境界層と温度境界層の厚みの関係を表しており、その値がおよそ1のときに両者の厚みが等しくなります。身近な流体のプラントル数は、空気で Pr = 0.7, 水で Pr = 7.0 となり、空気では速度境界層よりも温度境界層のほうが厚く、逆に水では温度境界層よりも速度境界層のほうが厚くなります。

プラントル数と境界層厚さの関係
図4.10 プラントル数と境界層厚さの関係

 

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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