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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第3章 流れ


3.4.2 層流と乱流 (2)

  流れ の状態が 層流 から 乱流 に変化することを 遷移 といい、乱流から層流に変化することを 逆遷移 といいます。そして、流れの状態が変化する境界の レイノルズ数 臨界レイノルズ数 といいます。

 臨界レイノルズ数は常に一定の値ではなく、流れが持っている乱れや物体の表面の粗さによって変化します。また、速度を徐々に大きくして流れが層流から乱流に遷移するときのレイノルズ数と、速度を徐々に小さくして流れが乱流から層流に逆遷移するときのレイノルズ数も異なります。前者のことを 高臨界レイノルズ数 (または 上臨界レイノルズ数 )、後者のことを 低臨界レイノルズ数 (または 下臨界レイノルズ数 )といいます。単に臨界レイノルズ数という場合には、一般に低臨界レイノルズ数のことを表します。

 それでは、最後に身の回りで見られる流れのレイノルズ数を計算してみます。ここでは例として、図3.30に示すように自動車が 50 km/h (= 13.89 m/s) で走行する場合を考えます。

自動車の車体周りの流れ
図3.30 自動車の車体周りの流れ

先ほどの式に代入すると

となり、レイノルズ数は約140万に達することがわかります。自動車のような複雑な形状になると臨界レイノルズ数を知ることはできませんが、レイノルズ数の値が大きく、乱流となることがわかります。これは一例に過ぎませんが、身近な流れや工業的に見られる流れの多くは乱流となります。

 もっと知りたい   代表長さと代表速度
レイノルズ数を比較する場合には、 代表長さ 代表速度 の定義を一致させなければいけません。

 例えば、円管内の流れの臨界レイノルズ数は約2,300であることが知られていますが、これは代表長さを円管の直径、代表速度を管内の平均流速とした場合の値です。仮に代表長さを円管の半径としてレイノルズ数を定義すれば、臨界レイノルズ数は約1,150となります。このように、代表長さと代表速度の定義によって値が変化することに注意が必要です。

円管内の流れにおけるレイノルズ数の定義
図3.31 円管内の流れにおけるレイノルズ数の定義

 なお、2,300 という臨界レイノルズ数は円管内の流れにおける値であり、対象が異なればレイノルズ数の定義も臨界レイノルズ数の値も変化します。いかなる流れ場においてもこの臨界レイノルズ数が当てはまるわけではないので注意してください。

 もっと知りたい   レイノルズの相似則
 レイノルズ数は粘性力と慣性力の比を表しています。そのため、流れ場の形状が相似で、流れのレイノルズ数が等しい場合には、それらの流れは本質的に同じものと見なすことができます。これを レイノルズの相似則 といいます。

 製品と実験に用いる模型の大きさが異なる場合には、流れをそのまま比較することが難しくなりますが、レイノルズの相似則が成り立つことで両者の対応を知ることができます。

 例として、図3.32のように U [m/s] で走行する自動車の周りの流れを、1/2の大きさの模型で再現するための 速度 U’ [m/s] を考えてみます。

実車周りの流れと模型の周りの流れ
図3.32 実車周りの流れと模型の周りの流れ

両者のレイノルズ数が等しくなるとすると、以下の関係式が成り立ちます。

この式を整理すると U'=2U となり、1/2の大きさの模型で実車の流れを再現するためには速度を2倍にするとよいことが分かります。

 もっと知りたい   無次元数
 物理量を表す上で、基本となる独立な7つの量のことを 次元 といいます。 熱流体解析 に関連が深い次元には、長さ『L』、質量『M』、時間『T』、 温度 『Θ』があります。例えば、面積は長さの2乗で与えられるため『L2 』、速度は長さを時間で割ったものなので『LT-1 』の次元を持ちます。

 3.1節の クヌーセン数 やレイノルズ数の次元を考えてみると、分母と分子で単位がキャンセルされ、次元を持たないことがわかります。このようなパラメータのことを 無次元数 といいます。無次元数を用いることによって、レイノルズの相似則のように単位や値に依存しない記述で現象を整理できる利点があります。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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