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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第3章 流れ


3.1 流体力学の枠組み

 流体力学 は流体の運動を扱う学問分野です。

 空気や水などの物質は極めて多くの分子から成り立っており、流体の流れはこれらの分子の運動によって生じています。それぞれの分子の運動状態にはばらつきがありますが、このようなミクロな観点から現象を議論することは非常に難しいため、流体力学の範囲では個々の分子の運動まで調べることはせずに、マクロな平均量で現象を記述します。

 流れの例を図3.1に示します。厳密には、左図のように各分子の速度にはばらつきがありますが、流体力学では右図のようにある体積に存在する分子の平均値で流れを表現します。

流れの表現
図3.1 流れの表現

 ある空間を占める分子の平均量を用いて、分子の集合を連続な物質と見なしたものを 連続体 といいます。連続体という考え方は流体のみではなく固体に対しても用いられ、連続体全般の運動を扱う学問のことを 連続体力学 といいます。

 もっと知りたい   連続体の条件
 流体の分子は絶えず運動しています。もし、空間に存在する分子の数がある一定の数よりも多ければ、分子どうしが衝突を繰り返すため、各分子の状態は一様に分布した状態と見なすことができます。

 ところが、分子の数が少ないと衝突の頻度が低くなり、各分子の状態は十分に均されなくなります。分子の数が少ないというのは、空気であれば 真空 の度合いが高い状態にあたります。このような場合には各分子の状態にばらつきがあるため、連続体としての近似が成り立たないことに注意が必要です。

空気の状態と分子
図3.2 空気の状態と分子

 連続体としての近似が成り立つかどうかを示す指標に クヌーセン数 があります。これは分子の平均自由行程 を流れの代表長さで割った無次元数で、値が小さいほど分子の衝突頻度が高く、連続体の仮定に近い状態であることを示しています。 なお、平均自由行程とは分子がある分子と衝突してから、別の分子と衝突するまでに移動する距離のことで、流れの代表長さは流れを特徴づける長さ(円管であれば円管の直径)のことです。

 目安となる値は文献によって記述が多少異なりますが、クヌーセン数が0.01未満であれば連続体と見なして差し支えない範囲といえるでしょう。

 では最後に、真空における空気の平均自由行程を考えてみたいと思います。一言で真空といっても、日本工業規格(JIS)ではその度合いに応じて4つの圧力領域が設けられています。空気の分子直径を 372 pm(372 × 10-12 m)、温度を20 ℃ とすると、各領域における平均自由行程は図3.3のようになります。

圧力と平均自由行程
図3.3 圧力と平均自由行程

 高真空領域と超高真空領域の境界(10 μPa)では、空気の平均自由行程は約 660 m にもなります。これは分子が別の分子と衝突せずに 660 m も進めるほど分子が少ない(空気が薄い)ことを表しています。一辺が1 m の立方体容器(代表長さ1 m)にこれらの空気が満たされていると考えると、連続体と見なせるのは中真空領域あたりまでで、それより圧力が低い場合には連続体としての仮定が成り立たないことがわかります。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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