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技術情報・コラム

流体解析の基礎講座 第7回

第3章 流れの基礎(4)


3.2.2 定常と非定常

 図3.12に示すように、容器に水を注いでいる状態を考えてみます。最初、容器の水位は (a) のように時間の経過とともに高くなりますが、あるところまで水位が上昇すると、(b) のように注水量と排水量がつり合い、水位が一定となります。


図3.12 水が溜まるときの様子

 (a) のように時間経過とともに変化する状態のことを 非定常 状態と呼びます。一方、(b) のように時間に関係なく水位が一定となった状態のことを 定常 状態と呼びます。 熱流体解析 を行う場合には、このいずれの状態を求めるのかをあらかじめ選択しておく必要があります。
 定常解析では定常状態のみが求められ、定常状態へと向かう過程については予測することができません。計算を途中で打ち切った場合には、結果が物理的な意味を持たないことに注意が必要です。
 一方、非定常解析では短い時間に区切って、ある瞬間の状態から次の瞬間の現象を求めるという手順を繰り返します。そのため、現象の時間経過を得ることができます。なお、非定常解析でも十分長い時間解析を行うことで定常状態を求められますが、一般的には非定常解析よりも定常解析のほうが短時間で結果を得られるため、定常状態のみに関心がある場合には定常解析を選択します。

3.2.3 ベルヌーイの定理

  流体 密度 ρ流速 v とした場合に ρv2 / 2 は 圧力 と同じ単位となります。これは 流れ が持つ運動エネルギーを表しており、 動圧 と呼ばれます。これに対して、3.1.2節で述べた大気圧のように面に作用する力は 静圧 、動圧と静圧の和は 全圧 と呼ばれます。
 流体に 粘性 がなく体積も変化しない場合(このような流体を 理想流体 といいます)には、流れが時間的に変化しなければある経路上の全圧の値は一定値となります。これを ベルヌーイの定理 といい、流体のエネルギー保存則を表しています(ただし、現実の流れでは粘性によるエネルギー損失が生じるため、全圧は流れの方向に減少します)。
 例えば、図3.13の断面Aと断面Bを比較すると、ベルヌーイの定理より両断面で全圧は等しくなります。このとき、断面積が大きい断面Aのほうが、流速が小さいため、動圧は断面A < 断面B となり、静圧については逆の関係 断面A > 断面B が成り立ちます。


図3.13 ベルヌーイの定理

 イメージしづらいかもしれませんので、最後に簡単な実験をご紹介します。図3.14のように2つの風船を用意し、その間に息を強く吹きかけてみてください。上手くいくと2つの風船がくっつきます。これはベルヌーイの定理によって流れが速い部分では圧力が低くなることによるものです。興味がある方はぜひ試してみてください。


図3.14 風船を使った実験

 次回は、「第3章 流れの基礎(5)」についてご説明したいと思います。

< 3.2.1 圧縮性と非圧縮性 3.2.4 層流と乱流 >

上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

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