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解析事例・インタビュー

テキサスA&M大学 様
超弾性形状記憶合金コブフィラーを有する
航空機前縁スラットの流体構造連成解析

[後編] テキサスA&M大学の研究者たちは、超弾性形状記憶合金で作られた航空機の翼前縁に設置されるスラットコブフィラー(SCF)が展開されたときの騒音低減効果を検証するため、流体解析(CFD)と流体構造連成(FSI)の解析を実施した。この解析ではフィラーが圧縮され計算要素がつぶれることにより体積がゼロになるという課題があり、CFDソフトウェアには複雑なメッシュ変形、非線形性材料特性を含むFSI解析を行うための機能が求められる。高精度の解析を実現した取り組みを聞いた。

スラットの移動変形に対応可能なSCRYU/Tetraの強力なメッシング機能

図3 重合格子機能
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 M2AESTRO研究チームがFSI解析で利用するCFDソフトウェアを選定するための条件は、非線形性を考慮したSCFの複雑な変形を処理する能力があることだったという。SCRYU/Tetraの重合格子機能は移動変形可能な従属領域を固定された全体領域にオーバーラップさせものだ。そのメッシュはスラットの大きな変形と回転移動に対応できる。

 

 今回の検証で研究チームは、スラットとSCFを従属領域に、風洞領域と主翼を全体領域に作成している(図3)。

 

 FSI解析のためのSCRYU/Tetraと構造解析ソフトウェア(Abaqus)との接続は、SCRYU/Tetra側にダイレクトインターフェースがあるため、Abaqusの連成エンジンと簡単に接続できる。SCRYU/Tetraを選んだもう1つの大きな理由は、この機能だったという。流体と構造の計算は弱連成解析によって行うことができ、SMA連成モデルの解析を実現した。

SCFの格納と展開を考慮した初めてのFSI解析

図4 ボーイング-NASA共同研究モデルの2次元CFDモデル
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 BoeingとNASAの共同研究モデル(CRM)として知られている高揚力翼の2次元断面のCFDモデルをもとに、スラット展開時の複数の迎角におけるSCF有無によるモデルが作成された。境界条件としては、解析領域の床と天井、翼表面は壁面とし、出口は静圧ゼロの圧力境界、入口には一様流の速度が定義されている(図4)。CFD解析は、流入条件を一定とし、迎角や翼構成が異なる各モデルについて、揚力、抗力、表面圧力がどのように変化するかが検討されている。

 

 SCRYU/Tetraの重合格子機能とAbaqusのダイレクトインターフェース機能を用いてSMAベースのSCFを持つ共同研究モデルのFSI解析が行われた。特に注目すべきポイントは、1) 完全に展開されている状態、2) スラットの格納と展開の2つの負荷状態におけるSCFの挙動で、どちらの負荷状態においても、初期のCFD解析を行い流れの初期化が行われた。またFSI解析からは、SCFが完全に展開されている状態でも形状を維持できる(つまり騒音低減の可能性がある)ことが示され、SCF自体もスラットの格納、展開に追随し独立的に展開できることを証明できた。

 

 スラットが格納されSCFが大きな変形(流体領域の変形)を受けているFSI解析の初期状態では、SCF内の流体要素のメッシュが実質的に消滅するか、またはサイズが限りなくゼロに近くなる。この状態はCFD解析に大きな問題を引き起こす可能性があるが、研究チームがこの問題をどう解決したか、ハートル博士はこう説明する。「この問題の解決策は従属領域の再メッシュ(実質的な流体モデルの局所的再メッシュ)を実施することでした。ある決まったタイミングでスラットのFSI解析を中断し、変形後の形状に合わせてメッシュを再構築します。そして新たなメッシュを使い、以前の結果を初期状態として計算を進めるようにしました」。

 

 さらに、SCRYU/Tetraのマッピング機能は、これらの操作を非常に簡便にしたという。そして、主翼両端に重合格子を使うことで、スラットの移動を含む翼全体の完全な解析を実現した。

図5 FSI解析による格納時と展開時の流速コンター図
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 図5はスラットが格納状態から展開状態になるまでのいくつかの状態におけるFSI解析から得られた流れの速度分布図だ。M2AESTRO研究チームによれば、この移動メッシュ(スラット)と固定メッシュ(主翼)を利用した、移動変形をするSMA構造の初めてのFSI解析だという。

 

 計算と並行してこの共同研究モデルの実験も行われ、CFDおよびFSIの解析結果は、揚力、抗力および表面圧力などで実験結果と良く一致していたという。つまり、数値計算の基本性能が証明され、今後の活用に期待が持てる結果を得られたということだ。

 

 現在、SCFの変形を計測する技術を開発中で、この技術が確立すれば、数値解析結果を検証するためのさらに多くのデータを得ることができるという。

 

 このようにCFDとFSIを利用することで、複数のSCFモデルを作成し実験を行わなくとも、SCFの評価が可能になっている。そして、複数の数値解析のパターンは、将来実験を行う際の安全な条件を見出す為にも有効であり、その条件が実験で検証される。そして数値解析は実験的に困難な条件でも検討が可能だ。加えて、数値解析は実験と比較して多くのデータを得ることができる。これは実験モデル作成上の制約(費用を含む)と計測上の制限に依るものだ。

 

検討時間が課題

 CFDは航空宇宙業界では広く利用されているが、一般論としてモデル作成からメッシュ生成、計算実行に至る一連の時間にはまだ課題があるという。結果的にCFDの多くは航空宇宙システムの設計プロセス後半で使われている。

 

「通常、設計の初期段階では、技術者はパネル法や揚力線理論のような簡便ではあるものの、それほど精度は高くない方法に基づく検討を行います。しかし移動変形機構は航空宇宙の分野でも一般的になってきており、複雑な機構や複合素材の挙動を把握するためには、従来の方法では検討できず、CFD解析が必要になります。さらに、移動変形機構にFSIの解析が必要な場合は、CFDソフトウェアが構造解析のソフトウェアと連成できる機能を持っていなければなりません」と、ハートル博士は説明する。

 

将来的なCFD利用について

 M2AESTRO研究チームは移動変形機構が流れの中でどのように動作するかを理解するために、引き続き高精度のCFDを利用していく。実験には、変更できる状態や条件にも限りがあるが、CFDではより多くのケースについて検証できるのだという。

 

 また、CFD解析で得られた表面の圧力分布は複雑な非線形構造が流れの中でどのような挙動を示すかの条件としても利用する予定だ。このようにCFDを活用する場面は無限に広がり、M2AESTRO研究チームは引き続きソフトウェアクレイドルとの連携を希望している。またソフトウェアクレイドルはFSI機能の強化を積極的に進めており、M2AESTRO研究チームが目標を達成するための大きな助けとなるのは間違いないだろう。

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2018年1月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。​

プロフィール

 
 

 

テキサスA&M大学
創立 1876年
大学種別 土地・海洋・宇宙開発研究助成指定
所在地 カレッジステーション、テキサス
(アメリカ)
大学職員数 4,900名
学生数 68,825名(2017年秋現在)
卒業生数 15,135名(2017年秋現在)
URL https://www.tamu.edu/

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