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解析事例・インタビュー

ナカシマプロペラ株式会社 様
船舶用プロペラの効率化を追求
流体技術で国際競争を勝ち抜く

写真1 エンジニアリング本部 プロペラ設計部 プロペラ・ポッド推進性能室
写真右:室長 蓮池伸宏 氏/写真左:課長代理 岡﨑全伯 氏

[後編] 環境対応が着々と進んでいる造船業界。国内外の造船メーカーに向け船舶用プロペラを供給するナカシマプロペラは、率先して安全かつエネルギー効率の高いプロペラや省エネルギー付加物の開発、製造を行っている。その際に欠かせないツールとなっているのが、ソフトウェアクレイドルの流体シミュレーションソフトウェアSCRYU/Tetra®だ。

図1 カラーコンターはエロージョンインデックス、
​白い流れはキャビテーションを表している ※クリックで拡大

エロージョンリスクを実装

 導入当初に得られた成果の一つが、エロージョンのリスクを「エロージョンインデックス」機能で評価できるようになったことだ。蓮池氏らが流体解析ツールを導入してまず取り組みたかったのが、エロージョンの評価だった。図1がエロージョンインデックスのコンター図だ。白い泡はキャビテーションを表している。6枚の羽根をすべて違う形状で検討した結果、左上の羽根がエロージョンリスクの少ない形状だということが確認できる。キャビテーションは流れの遅くなっている上部に差し掛かるときに発生し、横側に移動するまでにつぶれてなくなる。性能のよい羽根では、キャビテーションはスムーズに上に移動し、羽根に衝撃を与えずに消えていることが確認できた。

 実はこのエロージョンインデックスは「ソフトウェアクレイドルさんに実装を検討頂き、SCRYU/Tetraに導入していただきました」と蓮池氏はいう。これはもともと能見らが提唱していたエロージョンのリスク予測指標であるが(注1)、舶用プロペラのエロージョンリスク予測に効果的と判断したためだ。従来はどのような形状のプロペラだとエロージョンのリスクが高いかを正確に評価することは難しかった。だが今回の取り組みによってリスクの高い形状の条件が分かるようになった。またキャビテーションがスムーズに消えるようにコントロールできるようになった。そのため羽根の小翼面積化と効率化も同時に達成できたという。

(注1)エロージョンインデックス:キャビテーションによるエロージョンリスクを予測する指標。
Nohmi, M., Iga, Y., and Ikohagi, T., "Numerical Prediction Method of Cavitation Erosion", Proc. of Turbomachinery Society of Japan,Vol. 59, 2008

図2 頭に付けたバルブヘッドでハブ渦を回収することにより、舵の上の負圧が増加し、舵の抵抗が減少する。またプロペラ面に入ってくる流れをせき止める効果により、伴流利得を向上させることに成功した。※クリックで拡大

新たな省エネ付加物の設計にも活用

 ナカシマプロペラはSCRYU/Tetraを活用して、プロペラ以外のエネルギー効率を向上させる付加物も開発している。その一つがラダーバルブの一種である「アルティメットラダー」だ。ラダーバルブとは、舵の前縁、プロペラの頭の後ろにあたる位置に付けられる球状の突起物だ。プロペラが回転すると、通常その後方にハブ渦と呼ばれる細長く伸びた渦が発生する。これはエネルギー効率の低下につながる。そこでハブ渦が発生する後方に突起物を配置することで、ハブ渦を拡散させる。

 アルティメットラダーは、ラダーバルブをさらに進化させたものだ。これは本来、舵側に取り付けるバルブを、プロペラの頭に直接取り付けたものになる。バルブをよりプロペラ側に近づけることによって2つの効果を実現している。一つはハブ渦の拡散性能のアップ、もうひとつは伴流利得の向上だ。「ラダーの縁にあったヘッドをプロペラの方に近づけることで、プロペラに入る流れが遅くなることを狙っています。この形状は当社オリジナルになります」(岡﨑氏)。プロペラはできる限り遅い流れの中で遅く回すときに最も効率がよくなるため、プロペラ面に入ってくる流れをせき止める効果により、伴流利得を向上させることができるのだ(図2)。

 「ここ何年かの間に、CFDツールの力を借りて新しい省エネ付加物を提案できるようになりました」と蓮池氏はいう。CFDによって、キャップ単体でなくプロペラや船体、舵などを合わせた全体としての最適化ができる。元々はこういった付加物は試作品を作って水槽の中でプロペラを回転させながら実験していた。「今はCFDのおかげで試験を減らすとともに、最適な形状を低コストで簡単に素早く検討することができています」(蓮池氏)。

​統合ツールを最大限活用

 SCRYU/Tetraを使う中で感じたのは、「メッシュの作成からソルバーの実行までが非常に高いレベルで統合されているので、とても使いやすい」ことだと蓮池氏はいう。メッシュが非常に切りやすいのもポイントだということだ。「SCRYU/Tetraは割とすぐに使いこなすことができました。当社では設計のメンバーはみな当たり前に解析を行っています」(蓮池氏)。

 またナカシマプロペラは来年、直径6メートルと今までで最大のCFRP製プロペラの製作も計画している。CFRPは軽量なため、金属製よりも大きなプロペラを取り付けることが可能になりエネルギー効率を高めることができる。「金属製と違ってCFRPはしなりがあります。これをうまくコントロールすることで、キャビテーションをコントロールするとともに振動をより抑えることが可能になります」(蓮池氏)。構造と流体の連成が必要になるため解析は複雑になるが、ここでもSCRYU/Tetraが活躍しているという。「こういった複数の機能を使う時も、SCRYU/Tetraではオールインワンでできるので非常に便利ですね」(蓮池氏)。


船全体のバーチャル試験環境をつくる

 今後、船舶業界で重要になってくるのは騒音対応だと蓮池氏はいう。海上を移動する船舶のプロペラからは騒音が発生するが、これがクジラなどの海洋生物同士の音声を使ったコミュニケーションに悪影響を与えると言われている。そのため騒音に関する規制が議論されているという。この動きに対応するために、ナカシマプロペラでも騒音低減に力を入れていくということだ。

 

 さらにナカシマプロペラが取り組もうとしているのが、プロペラだけでなく船体全体を統合した状態における設計の最適化だ。「今まではプロペラメーカーはプロペラだけ、造船メーカーは船体だけというように、個別に設計の最適化を行ってきました。ですが船舶としてトータルの効率化を考えるためには、すべてを組み合わせて解析を行う必要があります。そこで『バーチャルトーイングタンク(仮想曳航水槽)』を構築しようとしています」(蓮池氏)。

写真4 ナカシマプロペラの並列環境

 この取り組みのために、ナカシマプロペラは並列計算の環境拡大も進めている(写真4)。現在は3000並列だが春には5000並列に増強するという。「かつては2週間かかっていた数千万要素の計算も、現在は1日強で行えるようになっています」(蓮池氏)。ナカシマプロペラではバーチャルトーイングタンクのEEDI認証での使用も見据えているという。「ソフトウェアクレイドルさんとも協力してシミュレーション環境を構築していく予定です」(蓮池氏)。


​ 常に先進的な取り組みを続けるナカシマプロペラ。 ソフトウェアクレイドルも、その取り組みを支えるべくソリューションの提供に、今後も注力する予定だ。

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2016年1月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

プロフィール



 

ナカシマプロペラ株式会社
創業 1926年
設立 2008年
事業内容 舶用機器の開発・製造・販売
環境改善装置の開発・製造・販売
エクステリア商品の企画・製造・販売
本社 岡山市東区上道北方
代表者 代表取締役社長 中島基善
URL http://www.nakashima.co.jp/

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