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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第6章 熱流体解析の手法


6.3.2 空間の分割 (2)

 計算は分割された 要素 ごとに行われ、各要素は 速度 温度 などの値を1つだけ持ちます。したがって、個々の要素の中では値の分布はなく、一定値ということになります。多くのポストプロセッサでは、分布を滑らかに表示するような工夫がなされているため、各要素の値が一つであることや要素の粗さの影響を実感する機会はそれほど多くありませんが、そのような加工を行わずに結果を確認すると要素の粗さによる影響がよくわかります。

 例として、スマートフォンを模した発熱体が放熱する際の解析結果を図6.20に示します。この図中の温度分布は滑らかに見せる加工を行っていないため、モザイク状の表示となります。また、左右の図では要素の細かさが異なります。両者を比較すると傾向は一致しているものの、要素分割が細かいほうがシャープに温度分布を捉えられており、最高温度もより高い値を示していることが分かります。


図6.20 要素分割と温度分布の違い

 このように要素分割の細かさによって、捉えられる分布には違いがあります。緩やかな分布であれば粗い分割でも問題はありませんが、粗い要素では捉えられないような急な分布の場合には、細かい分割を行わないとピークが小さく評価される場合や分布そのものが異なる場合もあります。多くの場合には、壁面近傍では流れや温度の変化が急になることから、着目している物体の近傍では小さな要素によって分割を行い、物体から離れるにつれて大きな要素で分割を行っていくという方法が採られます。

 もっと知りたい   壁面近傍における要素分割
 壁面の近くでより細かな要素分割が必要となるのは、壁面近傍では 境界層 が形成され、速度などの物理量の勾配が大きくなるためです。図6.21には壁面付近における速度分布の一例を示していますが、要素の幅が異なると計算で認識される速度の分布や勾配が違っていることが分かります。


図6.21 要素分割による速度分布の違い

 第14回で触れたように、速度勾配は 粘性 の作用に関連づけられるため、計算上の速度勾配が異なれば、流れもその影響で違ったものとなります。そのため、熱流体解析 では境界層内の解像度を高め、精度を向上させる目的で、壁面近傍において壁面に垂直な方向に薄い層状の要素を配置する方法がよく用いられます。このように配置された要素群のことを 境界層要素 やレイヤーメッシュなどといいます。


図6.22 境界層要素

< 6.3.2 空間の分割 (1) 6.3.3 メッシュの種類 >

 

上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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