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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第5章 物質拡散


5.4 濃度の支配方程式

 物質拡散 に関する 基礎方程式 検査体積 に出入りする各成分の質量の保存を考えることによって得られます。一般には、この式を 化学種の保存式 拡散物質の保存式 などといい、 拡散係数、混合物の 密度 ρ として、以下のように書くことができます。

 ここで、t は時間、Ci は 成分 i 濃度di は成分 i の発生量、u, v, w はそれぞれ x, y, z 方向の流速を表しています。この方程式が混合物を構成する各成分について成り立ちます。

 例えば、密度が異なる物質 A と B の混合物において、場所によって占める割合が A > Bであったり、A < B であったりすると、混合物の密度は場所によって異なります。三種類以上の場合も同様で、場所によって成分の割合が異なれば、混合物の密度も場所によって異なってきます。このように密度が一定とならない場合には、圧縮性流体 としての取り扱いが必要になります。

 ところが、混合物の大半をある一種類の物質が占めていて、わずかに別の物質が混ざっているという場合には、混合物の密度は大半を占めている物質の密度と見なしても差し支えありません。このような場合には、非圧縮性流体 として扱うことができます。さらに、拡散係数も一定と見なせる場合には、先ほどの式は以下のように簡略化できます。

 この式は、エネルギー保存式 において 温度 を濃度、熱伝導率 を拡散係数、発熱量を発生量に置き換えたものと同じ形になります。また、濃度は 流れ に影響を与えることなく、流れに乗って運ばれていくことになります。このように流れに影響を及ぼさず、受動的に輸送されるだけの スカラー量 のことを パッシブスカラー といいます。

 それでは、化学種の保存式の各項を見ていきます。上式の左辺第一項(赤枠)は濃度の時間変化を表しています。
左辺第二~四項(黄枠)は、図5.17に示すように濃度分布が流れによって運ばれていく様子を表しています。例えば、流れの中にインクを垂らすとインクは上流から下流へ運ばれていきますが、この効果を表現したものになります。


図5.17 流れによる物質拡散

右辺第一項(緑枠)は 分子拡散 によって濃度分布が均一になっていく様子を表しています。図5.18のように二種類の物質を中央で区切られた容器のそれぞれに入れ、あるタイミングで仕切りを取り去ると、やがて濃度が均一になりますが、この効果を表したものです。


図5.18 分子拡散による物質拡散

そして、右辺の第二項(青枠)は物質の発生を表しています。発生がない場合には0となります。

 ところで、静止した流体では物質は分子拡散でのみ拡がります。このときの基礎方程式は、先ほどの方程式から流れの効果を表す項(黄枠で囲んだ左辺第二~四項)を取り去ったものとなり、以下のようになります。

特に、上の式で発生量を0とした以下の式を フィックの第二法則 といいます。

 

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座 」がある。

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