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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第4章 伝熱


4.5.3 自然対流と強制対流

 もとは静止した 流体 であっても、 温度 差が大きくなり、粘性力(流れを静止させる力)よりも 浮力 (流れを引き起こす力)のほうが大きくなると次第に 流れ が生じます。このように温度差のみによって駆動された流れのことを 自然対流 といいます。これに対して、ファンやポンプなどの機械的な方法によって駆動された流れのことを 強制対流 といいます。

 図4.14は発熱体の をヒートシンクで放熱する様子を示した例です。(a) のように流れを駆動する機械的な要因がなく、ヒートシンクの周囲で温められた空気の浮力のみによって駆動される流れは自然対流になります。一方、(b) のようにヒートシンクにファンで風を送り込む場合は、流れが外部の要因によって駆動されているため、強制対流となります。なお、前者の冷却方式を自然空冷、後者の冷却方式を強制空冷といいます。

自然対流と強制対流
図4.14 自然対流と強制対流

 温度差がある場合でも、浮力に対してファンやポンプなどによって駆動される流れの慣性力(流れの勢いによる力)が大きければ、流れは強制対流と見なすことができます。しかし、浮力を無視できるほど流れの勢いがない場合など、実際の問題では慣性力と浮力の両方の寄与が無視できないケースが数多く存在します。このような流れは 共存対流 もしくは 複合対流 と呼ばれ、流れを駆動する要因がある場合でも、浮力の影響を考慮することが望ましいといえます。

共存対流の例
図4.15 共存対流の例

 ところで、圧縮性流体 として解析を行う場合には流体の 密度 変化を考慮することができるため、浮力を厳密に扱うことができます。しかし、非圧縮性流体 では流体の密度変化を考慮することができないため、浮力を温度差に比例する力で近似する方法が用いられます。この近似は ブシネスク近似 (または ブシネ近似 )と呼ばれますが、一般には温度差が大きくなるにつれて近似に伴う誤差も大きくなるため注意が必要です。

 もっと知りたい   ブシネスク近似の誤差

 ブシネスク近似では温度変化に伴う浮力 F [N] を、基準温度における密度 ρ0 [kg/m3 ]、重力加速度 g [m/s2 ]、体膨張率 β [1/K]、温度 T [K]、基準温度 T0 [K] を用いて以下の式で表現します。

浮力 F [N/m3 ]= - 基準密度 ρ0 [kg/m3 ]×重力加速度 g [m/s2 ]×体膨張率 β [1/K]×(温度 T [K] - 基準温度 T0 [K])


 前述のように、一般には温度差が大きくなるにつれてブジネスク近似は成立しなくなりますが、その理由は大きく二つあります。

 一つ目は、密度変化が温度差に比例すると見なしている点です。実際の密度変化には図4.16に示すような温度依存性があるため、比例と見なせるのは温度差が比較的小さい場合となります。

密度変化の温度依存性
図4.16 密度変化の温度依存性

 二つ目は、浮力のみが密度変化の影響を受けると考えている点です。実際には温度が上がり密度が小さくなると、流体そのものが軽くなるため慣性力(流れの勢いによる力)が小さくなります。ところがブジネスク近似では、慣性力については基準密度に基づいて計算されるため、密度変化に伴う勢いの変化が考慮されません。

 これらはいずれも 非圧縮性流体 を仮定したことに伴う制約になります。温度差が大きくこれらの影響が許容できないと考えられる場合には密度変化を考慮する 圧縮性流体 としての取り扱いが必要となります。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座 」がある。

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