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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第3章 流れ


3.5.3 流れの剥離

 物体の表面では 粘性 の働きによって摩擦が生じるため、流れ 速度 は下流に向かうにつれて遅くなります。そのため、上流よりも下流の 圧力 が高い場合には、流れが圧力に逆らいながら進むことができなくなり、物体の表面から剥がれてしまうことがあります。これを 剥離 といい、流れが剥離した位置のことを 剥離点 といいます。

 また、特定の条件では一度剥離した流れが再度壁面に沿って流れる場合があります。この現象を 再付着 といい、流れが付着した位置のことを 再付着点 といいます。

流れの剥離と再付着
図3.40 流れの剥離と再付着

 もっと知りたい   剥離の抑制
 物体に流れが衝突すると、前面に流れの速度が0となる点が生じます。これを よどみ点 といいます。一方、物体から流れが剥離すると、物体の背面にはよどみ点よりも圧力が低い領域が形成されます。このようにして、物体背面の圧力が前面の圧力よりも低くなり、物体は抵抗を受けることになります。

流れの剥離と圧力分布
図3.41 流れの剥離と圧力分布

 抵抗を少なくするためには、剥離点の位置を下流側に移動させ、圧力が低い領域を小さくすることが有効です。剥離は速度が小さくなり、圧力差に逆らえなくなることによって起こるため、剥離を防ぐ最も簡単な方法は、壁面近傍の 流体 に圧力差に逆らえるだけのエネルギーを送り込むことになります。

 3.5.2節において、乱流境界層 では流体の乱流運動によって運動量交換が盛んに行われることを書きました。一見しただけでは違和感を覚えるかもしれませんが、物体表面の流れを意図的に乱し、乱流境界層を形成して運動エネルギーを補うことができれば、剥離点を後方にずらすことができます。このように境界層をコントロールして、抵抗を減少させることを 境界層制御 といいます。ゴルフボールのディンプルや飛行機の翼に設けられたボルテックス・ジェネレーターなどは境界層制御の代表的な例です。

 なお、境界層の流れが層流から乱流に遷移するときには、抵抗が急激に減少することが知られており、このことを ドラッグクライシス といいます。

ゴルフボールのディンプル
図3.42 ゴルフボールのディンプル

< 3.5.2 境界層 3.5.4 円管内の流れ >

 

上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座 」がある。

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