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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第3章 流れ


3.4.2 層流と乱流 (1)

  流れ の状態は大きく二つに分けられます。一つは流れの方向に向かって、流体 が規則正しく運動している流れです。このような流れを 層流 といいます。一方、流体が流れの方向だけではなく、さまざまな方向に不規則に運動している流れのことを 乱流 といいます。流体の動きを人の動きに置き換えると、図3.27のようなイメージになります。

層流と乱流のイメージ
図3.27 層流と乱流のイメージ

 両者の区別は、1883年にイギリスの科学者 オズボーン・レイノルズ(Osborne Reynolds, 1842-1912)が行った実験( レイノルズの実験 )に遡ります。レイノルズは図3.28 (a)に示すような実験装置を用い、水が流れる円管にインクを注入して流れの可視化を行いました。その結果、流速 が小さいときには (b) のようにインクがほぼ一本線に流れ、流速が大きいときには (c) のようにインクが途中で乱れて拡散することがわかりました。この前者の流れが層流、後者の流れが乱流にあたります。

レイノルズの実験
図3.28 レイノルズの実験

 身近な例としては図3.29のように、水道の蛇口から流れ出る水が挙げられます。水の量が少ないときには (a) のように水はまっすぐに流れ、層流となります。ところが、水の量を増やしていくと次第に (b) のように液面が波打ち始め、乱流へと変化していきます。

身近な層流と乱流
図3.29 身近な層流と乱流

 レイノルズは前述の実験に基づき、流れが層流になるか、乱流になるかは レイノルズ数 という 無次元数 によって整理されることを見いだしました。このレイノルズ数 Re は 代表長さ L [m]、 代表速度 U [m/s]、流体の 密度 ρ [kg/m3 ] と 粘性係数 μ [Pa·s] を用いて、以下の式で定義されます。

また、粘性係数を密度で割ったものが 動粘性係数 ν [m2 /s] であることを踏まえると、以下のように表現することもできます。

 レイノルズ数は粘性力に対する慣性力の割合を表しています。粘性力は流体の粘りによって生じる力で、流れを安定させる働きがあります。一方、慣性力は流れの勢いによって生じる力であり、流れを不安定にする働きがあります。そのため、レイノルズ数が小さな流れは、粘性力が大きな安定した状態であり、層流になります。逆にレイノルズ数が大きな流れは、慣性力が大きな不安定な状態であり、乱流になります。

 流れを人が手をつないで輪を作り、回っている状態に置き換えてみます。この場合、人どうしが手をつなぐ強さが粘性力で、輪が回る勢いが慣性力にあたります。回る勢いに対して手をつなぐ力が強い(レイノルズ数が低い)ときには、輪は崩れずに安定した状態(層流)となります。ところが、勢いが強く(レイノルズ数が大きく)なると、手がほどけて輪が崩れた状態(乱流)となることがイメージしていただけるでしょうか。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座 」がある。

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