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技術情報・コラム

もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

第3章 流れ


3.3.2 圧縮性と非圧縮性(1)

 実在する 流体 は外部からの力や 圧力温度 の変化によって、圧縮もしくは膨張して体積が変化します。このように体積が変化する性質のことを 圧縮性 といい、体積が変化する流体のことを 圧縮性流体 といいます。

 一方、圧縮も膨張もせず、常に体積が一定である流体のことを 非圧縮性流体 といいます。厳密な非圧縮性流体は実在しませんが、身の回りの空気や水の 流れ のように圧縮性の影響がそれほど大きくない流れの場合には、非圧縮性流体として考えることができます。

 圧縮性の影響の大きさは 流速 で判断することができます。空気の場合には、流速がおよそ100 m/s 以下であれば非圧縮性流体、それよりも大きければ圧縮性流体として扱うことが一般的です。図3.19の例のように、そよ風のような低速の流れは非圧縮性流体、旅客機の周りの流れのような高速の流れは圧縮性流体ということになります。

非圧縮性流体と見なせる流れと見なせない流れ
図3.19 非圧縮性流体と見なせる流れと見なせない流れ

 なお、非圧縮性かつ非粘性(粘性がない)流体のことを 理想流体 または 完全流体 といいます。このような流体は存在しませんが、理論的な取り扱いが容易であるため、流体力学 の展開の基礎をなす重要な役割を果たしています。

 次回は、もう少し具体的に圧縮性流体と非圧縮性流体の違いを見ていきます。

 もっと知りたい   圧縮性?非圧縮性?
 流体の流れにおける圧縮性の影響は マッハ数 によって知ることができます。マッハ数は流れの速さと 音速 の比を取った 無次元数 で、流れによって生じる密度変化の度合いを表しています。

 よく用いられる基準は、密度変化が 5 % 以下の場合に非圧縮性流体、それを超える場合に圧縮性流体と見なすものです。密度変化 5 % に対応するマッハ数は約0.3です。20 ℃, 1気圧(= 101,325 Pa)の空気中における音速は約 340 m/sになるため、マッハ数0.3は約 100 m/sの流速に相当します。前述の 100 m/s という値はここから得られたものです。

 何%の密度変化をしきい値とするかには任意性があり、仮に一般的な基準より厳しく1 %とすれば、マッハ数は約 0.14、流速は約 50 m/s となります。なお、音速は温度や圧力によって変化するため、流速が等しくても条件が異なればマッハ数は変わることに注意してください。

 一方、水などの液体は密度変化が極めて小さく、気体に比べて音速が速くなります。例えば、20 ℃, 1気圧の水中における音速は約 1,480 m/s にも及びます。そのため、一般に液体は非圧縮性流体として扱われます。

 余談ですが、航空機などの非常に高速な物体の速さを「マッハ1」のように表現することがあります。これは速さが音速の何倍かを示したものですが、マッハ数と同様にその速さの定義は周囲の流体の条件によって異なってきます。

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上山 篤史
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。

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