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技術情報・コラム

流体解析の基礎講座 第14回

第5章 熱流体解析の基礎

 

5.3 解析領域

 例えば、航空機の周りの 流れ を解析することを考えてみます。航空機の周りには空があり、空の周りには宇宙があります。そのため、ありのままの現実を解析しようとすると、解析対象として際限のない空間を考えなければいけません。
 ところが、コンピュータで計算を行うことができるのは有限の値であるため、図5.9のように実際の空間を適当なところで切り出して、解析を行う必要があります。この切り出された空間のことを 解析領域 といいます。


図5.9 解析領域

 解析領域の面は実際に壁が存在するわけではありません。あくまでも計算の都合上作られてしまう面です。そのため、この面が流れに大きな影響を及ぼさないように、対象物から十分離れたところまでを解析領域にする必要があります。例えば、図5.10の悪い例のように流れの一部が解析領域の面にかかってしまうと、破線で示した部分の流れは正しく考慮されず、結果として得られる流れが本来とは異なるものになってしまう場合があります。しかし、解析領域を必要以上に大きく取ってしまうと、計算時間が不必要に長くなってしまうため注意が必要です。


図5.10 解析領域の取り方

 解析領域をどの程度の大きさにするかは慣れも必要な難しい問題ですが、どのような流れになるのかを予測しながら、領域の取り方を考えることが重要です。

5.4 空間の分割

 方程式を 離散化 すると隣り合う空間どうしの関係が得られます。この関係を実際の計算対象に適用させるためには、解析領域を複数の小さな空間に分割しなければいけません。この分割された個々の空間のことを 要素 セル と呼び、これらの集合のことを メッシュ 格子 といいます。
  流速 温度 などは要素ごとに計算され、それぞれの要素が1つの値を持ちます。そのため、要素内における分布を知ることはできません。図5.11に中央が高温、周囲が低温となる場合の解析例を示しますが、ここからもわかるように要素が大きいほど一つの値で表現される範囲が大きくなり、見ることのできる分布は粗くなります。


図5.11 要素の大きさと解析結果

 一般的に、要素が大きい(要素の数が少ない)場合には、計算回数が少ない分、計算時間は短くなりますが、分布が粗いため計算の精度は低くなります。逆に要素が小さい(要素の数が多い)場合には、計算回数が多い分、計算時間は長くなりますが、計算の精度は上がります。
多くの場合、着目する物体の近くでは流れや温度の変化が激しくなるため小さな要素で、物体から離れたところでは変化が緩やかになるため大きな要素で分割を行います。

 要素の分割の仕方には大きく2種類あり、図5.12の左下図に示すように要素が規則的に配置されたものを 構造格子 、右下図のように不規則に配置されたものを 非構造格子 といいます。


図5.12 メッシュ分割の例

それぞれの格子で用いられる代表的な要素の種類を図5.13に示します。


図5.13 代表的な要素の種類

 3次元解析の場合、構造格子の要素は6面体で構成されますが、非構造格子では4面体、5面体の要素で構成されます。構造格子では6面体の要素が規則的に配置されているため、要素の配置が容易で、計算速度の点で有利という特徴があります。一方、非構造格子では4面体や5面体の組み合わせで分割を行うため、構造格子と比較して要素の配置が難しいものの、配置の自由度が高く、複雑な形状の表現に適しているという特徴があります。

 次回は、「第5章 熱流体解析の基礎(4)」についてご説明したいと思います。

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著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

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