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解析事例・インタビュー

埼玉大学大学院
血管や気管内の流れを予測し、
工学の視点から生物を読み解く

[後編] 埼玉大学 大学院 理工学研究科のバイオメカニクス研究室では、SCRYU/Tetra®を駆使して医療や生物に関するテーマに取り組んでいる。医療分野に工学分野の視点を持ち込むことによって、従来は解けなかった医療分野の課題の解決を目指す。さらに生物の機能を取り込んだバイオミメティクスへの応用にも取り組んでいるという。

図4 鳥の呼吸器
(肺のまわりに気嚢が付いた構造)
※クリックで拡大

 

図5 鳥類の気管の分岐点における
流れのシミュレーション
突起(上図の赤丸部分)の存在によって流れ方向が
コントロールされている ※クリックで拡大

鳥の呼吸器のしくみを調べる

 鳥類の“飛ぶ”という行動は非常に負荷がかかるため、酸素が大量に必要だ。そのため鳥類は人とは大きく違った構造の呼吸器官を持っている。人の呼吸器官は空気を気管支から肺に送り、再び体外に出すという往復型だ。だが鳥類の場合は、空気は肺の内部を一方向に進むため、継続してガス交換が出来るという(図4)。


 鳥類の体内における空気の流れはループになっているが、出入り口は一つだけだ。ループに入る時、空気は一方向にだけ進み、逆方向に流入することはない。この理由については、ループ手前の突起が何らかの役割を果たしていると考えられてきたが、検証した例はなかった。そこで中村氏らは、鳥の呼吸器全体のCTスキャンから解析モデルを作成し、空気の流れをシミュレーションした。その結果、実際に突起によって一方向の流れが形成されていることがわかった。突起によって流路の断面積が狭くなって速度が上がり、上部に流れずにまっすぐ進むことが確認できたという(図5)。実際にシミュレーションによって可視化し、メカニズムを確認した例は初めてだという。
 

 この鳥の機能は、バイオミメティクスに応用できるだろうと中村氏は話す。通常、流体機械は流体を一方向に流すために弁を使う。先の事例の心臓でも同じだ。だが鳥類は弁をもたないにもかかわらず空気を一方向に送ることができる。弁があるということは複雑な機構となるため、弁への慢性的な負荷が原因で壊れることがある。鳥類の呼吸器に学ぶことで、例えば壊れにくいラジエータや透析器、また細かい構造を作るのが難しいMEMSなどにも応用できるのではないかという。

 

 またこの研究は生物学にも貢献するのではないかと中村氏はいう。生物学的分類への力学的視点の導入だ。さらに鳥類は爬虫類と類似点があるとともに、恐竜にも気嚢があることがわかっている。流体と形態の関係を考えることで、幅広い応用の可能性が考えられそうだということだ。

写真2 研究室の様子 中村先生と学生の皆さん

計算の安定性が高い

 研究室では、大学外と取り組んでいるものも含めていくつかのプロジェクトがあるため、複数のCFDソフトウェアを使っているそうだ。SCRYU/Tetraはその中でも計算の安定性が高いと感じるという。比較のために全く同じメッシュを使って計算した時も、SCRYU/Tetraでないものは発散したがSCRYU/Tetraでは問題なく計算できたそうだ。

 

 またSCRYU/Tetraにあるヘルプの使いやすさやサポートのスムーズさも、日々の解析作業においてプラスになっているようだ。「分からないことのほとんどは、ヘルプ検索で解決しています。日本語なのも使いやすいです」(学生の声)。「サポート面でも電話ですぐ聞くことができるため助かっています」(中村氏)。また他ツールと比較して、可視化の際のビジュアルがSCRYU/Tetraは優れている点が気に入っているという。画像を並べられるため異なる条件での比較がしやすく、視点が保存できるといった細かな面でも使いやすさを感じているという。

 

 SCRYU/Tetraの機能に関する要望としては、ある領域における粒子の平均年齢を知ることができればという。血液の流れは場所によってある程度留まることもあるため、それらを数値で確認できればということだ。また、旋回流や、流路断面において分布をもつ流速も簡単に入力できればより使いやすいだろうということだ。「我々にとっては専門分野なので、ユーザー関数を使った設定などを行うことができますが、医療系の人にとってはかなりハードルが高い可能性があります」と中村氏はいう。壁面せん断応力などのような医療分野で頻繁に使用するインデックスについてもボタン一つで見ることができれば、医療分野の人にとっては助かるだろうということだ。

生物ならではの難しさ

 生物を扱うにあたって大変なのがメッシュの作成だといい、毎回かなりの時間を費やすそうだ。工業製品と比べて、生物は曲線的で微妙な凹凸があったり、太い血管からいきなり細い血管へ分岐したりするなど複雑な形状をもつ。また元データになるCTデータにもノイズが多い。そのCTで撮影された医療画像用フォーマットのDICOMを画像可視化ソフトウェアに取り込み、STLファイルを作る。弁は別にCADでモデリングして、スカルプトソフトで形を調整するそうだ。これらの作業には1週間かかることもあるという。サンプルの形状は毎回異なるためその都度作業が必要で、さらに拍動すると時空間的な変化が加わる。もし手術支援に使うとすれば、これらの作業の簡略化も必要になってくるようだ。

 

 今回は生物分野ならではのSCRYU/Tetraの活用事例を聞かせていただいた。医療や生物の分野に流体工学を適用することで、着々と新たな知見がもたらされつつある。今後も同分野の発展を楽しみにしたい。

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2016年4月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

プロフィール

 

埼玉大学
大学設置 1949年
学校種別 国立
所在地 埼玉県さいたま市
URL http://www.saitama-u.ac.jp/

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