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解析事例・インタビュー

株式会社ケーヒン 様
自動車業界においても年々高まる騒音対策
より要求の厳しい車内空調機器の音解析に励む

 

[後編]流れの解析よりも取り組み難いとされる音の解析。だが空調機器やファンなどの動作機構を持つ部品に対する騒音低減の要求は年々高まっている。中でも自動車の空調機器は、エンジンのハイブリッド化や電気自動車の登場もあり、低騒音の要求が高い分野だ。車内空調を手掛けるケーヒンでは、SCRYU/Tetra®の機能をフル活用して、騒音源の特定やその対策などを行っている。

周波数分析で異音原因を突き止め

 SCRYU/Tetra®導入初期は流れ場しか解析していなかったが、音解析もできることが分かったため、現在は騒音の解析にも活用の幅を広げているという。

 騒音の音圧は大きくても数Pa程度にしかならないため、かなり高精度の解析が必要になる。そのため乱流モデルはLES(large eddy simulation)で48並列のマシン環境を使用している。

図5 ブロワのモーター冷却用流路の入り口における騒音の解析事例入り口の位置を移動することによって異音ピークを取り除くことができた(クリックで拡大)

 騒音の解析事例の一つは、ブロワの異音の原因を突き止め、さらに対策に成功したものだ。ブロワから風が出てくる場所の根元に、ヒータユニットへ送る空気とは別にモーターを冷却するための小さな空気の取り入れ口がある。あるモデルでの試作の実験では、その周辺で約1500Hzの異音が生じていた。シミュレーションで空気の流れを可視化したところ、図5のベクトル図のように、空気取り入れ口周辺に周期的な渦の放出が見られた。渦の発生周期は1秒間に約1500回であり、流体騒音解析を行って周波数分析図を得たところ、1500Hzあたりにピークが見られた。これが騒音の原因だと推定し、取り入れ口を移動して解析し直したところ、流れがスムーズになって周期的な渦がなくなるとともに、周波数分析においても1500Hzのピークがなくなった。この形状でブロワを試作し直したところ、実際に1500Hzの異音をなくすことができた。
 

ブロワのモーター冷却用流路の入り口における騒音の解析事例のアニメーション

 

図6 ヒータユニット内の流体騒音解析で音源探索を実施した
事例 空気が隙間を通る際に生じる異音の場所を​音源探索に
よって特定した(クリックで拡大)

 一方ヒータユニット内での送風の際に生じ
る異音についても、流体騒音解析で音源探索を行い、対策を取っている(図6)。車内空調モードに、Heat/Defという足元のヒータとフロントガラスのくもり取り(デフロスタ)とを同時に動作させるものがある。このモードにおいて、ヒータユニット内にあるヒータから送られる温風とエバポレータから送られる冷風の量をコントロールするためのスライド式ドアが、少しすき間が開いた状態になった際、異音が生じていた。この現象を流体騒音解析によって音源探索を行い、場所を特定することで、異音対策の一助とすることができた。

解析環境を着々と整備

 解析ツールの習得環境については設計者や専任者それぞれに応じて整備している。初めはSCRYU/Tetra®を使用するのは解析専任者数名だった。その後、徐々に増え、現在はSCRYU/Tetra®を使える解析専任者は3倍ほどになったという。ブロワ全体およびヒータユニットの騒音については専任者が取り組んでいる状態であり、いかにして多くの設計者が手軽に使えるツールにしていくかが今後の課題だ。
 

ブロワのメッシュが切れたことが採用の決め手に

 このようにブロワの非定常流れや騒音解析で活躍するSCRYU/Tetra®だが、採用した第1の理由が、解析の準備が手軽にできたことだ。ヒータユニットに続いてブロワにも流体解析を行おうとしたが、ブロワは羽根の回りをくるむように境界層を設定しなければ圧力を正確に捉えられなかったため、従来のツールでは、本来四十数枚程度ある羽根の枚数を仮に十数枚程に減らしてモ
デルを簡素化しても、メッシュをうまく切ることができなかったそうだ。その後も試行錯誤したが現実的な方法はなかったという。そこでSCRYU/Tetra®を使用してみたところ、境界層を含めたメッシュを容易に作成することができた。

「もう一つの決め手が、解析時間が圧倒的に短かったことです」と小野寺氏は言う。ブロワは非定常解析で、計算にとても時間が掛かった。だが、SCRYU/Tetra®では解析精度を落とさないまま、同じスペックで実に3分の1にまで圧縮できたという。
 

複数の音源分離が可能に

 騒音解析を行う中で、要望していた機能が追加されたこともあったそうだ。SCRYU/Tetra®がバージョン9の時点では、ある点における音の波形をシミュレーションした場合、複数の音源があった場合でも波形はそれらの複合波形であり、音源ごとに分離することはできなかった。小野寺氏らがソフトウェアクレイドルのサポートに問い合わせた時点では、いくつかの観測点における複合波形をシミュレーションし、それらの波形の違いから推測するしかなかった。だがバージョン11においては、ある1点のみの観測で、音源ごとに音圧を分離して評価できるようになったという。実験では音源ごとに波形を分離することは不可能であり、その点からも有用な機能だといえるだろう。

「機能要望の反映をはじめ、日頃のサポートの対応もすごく早いです。ユーザーの声を素早くくみ取ってくれるといったところは国内メーカーならではのメリットだと感じています」(小野寺氏)
 

連成解析によってシステム全体の評価を目指す

 SCRYU/Tetra®での騒音解析より複雑な解析を行いたい場合は、音響解析の専用ツールとの連携による解析も行っている。さらに、最適化ツールなどとも連携することで、より短期間での開発を求められる中においても、より良い製品開発を目指していくということだ。

 複雑かつ高度な評価を推し進めるケーヒンからソフトウェアクレイドルへの要望としては、複数の解析ツールを連携させる繋ぎの部分は、ユーザーが作りこむにはハードルが高いので、「SCRYU/Tera®とダイレクトインターフェースで繋がる解析ツールの種類を増やしてもらえると助かります」(小野寺氏)とのことだ。

回転体の流体解析の設計者展開を視野に

 同社は今後もものづくりへのシミュレーション活用を着々と進めていくそうだ。現在はSCRYU/Tetra®は解析の専任者しか使えないが、今後はライセンスを増やすとともに、マニュアルの充実や、ブロワ領域の流体解析についても自動化ツールを作る計画を進めているという。VBインターフェースを活用して、ソフトウェアクレイドルが実施する講習を受けながら取り組みを始めているということだ。

 着々とCFDの活用範囲を広げ、効率良い設計環境を追求するケーヒン。SCRYU/Tetra®も確実により良い製品作りの力になっているようだ。
 

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2013年6月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

プロフィール



 

株式会社ケーヒン
設立 1956年12月
事業内容 自動車部品の製造販売
代表者 代表取締役社長 田内 常夫
本社所在地 東京都新宿区
資本金 69億32百万円(2013年3月31日現在)
URL http://www.keihin-corp.co.jp/

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